いやんべ…

実家の母ちゃんがまだ元気に歩けた頃、山菜の季節になると農作業の合間を利用してあちこちに採りに出かけたんだよ。ゼンマイは干して、ワラビやフキは塩漬け保存して、お正月のご馳走の1品に加えられたんだ。特に母ちゃんが作るフキ菓子はすごく美味しくて、秋保に嫁いでからもわざわざ貰いに行ったほど、フキの季節が楽しみだったんだって。でも…毎年貰ってばかりいるのも申し訳ないし、おふくろの味を自分が引き継ごう!と思って「作り方を教えて」って母ちゃんにいうと「いやんべだ…」いつも同じ答えが返ってくるんだよ。「いやんべ(いいあんばい)」っていうのは方言で「適当、いいかげん」っていう意味なんだって。自慢料理ってほとんど目分量と長年の感で作れてしまう…だからばあちゃんにとっては「良い塩梅であって、良い加減であって…」ちゃんとしたレシピなんて無いんだよね。だから見よう見まねで作ってみても数をこなさないと同じ味にはたどり着けないみたい…。 今は何か聞くと「わっしぇだわ(忘れた)」っていうこと
が多くなった母ちゃんなんだって。
写真は、秋保大滝植物園の春の遊歩道の風景だよ。園内の自然林には沢山のヤマツツジが自生しているんだ。優しい色合いのこの季節がお母(かあ)は一番好きなんだって。